卒業生
「学ぶことを止めたら教師を辞めろ」。その言葉を胸に、常に邁進する日々。
阿部 卓
外国語学部 英語英文学科
職種:英語科教員
就職先:横浜市立義務教育学校西金沢学園
INDEX
01「今までの英語の授業は一切忘れなさい」の衝撃
「ついでに、英語の先生にでもなれればいいか…」。最初は自分の将来のことをその程度しか考えていませんでした。高校生までの私はとにかく陸上競技一本。「大学に行くなら、有名な箱根駅伝に出場できる大学を選びたい!」と、当時の監督に相談して神奈川大学を紹介してもらい、門を叩きました。転機が訪れたのは大学2年のとき、「ついでに教師」気分だった私に、基礎ゼミナールで出会った髙橋一幸先生がエンジンをかけてくれたのです。「英語教師を目指すなら、今まで受けた英語の授業は一切忘れなさい」。その強烈な言葉は、アメリカからの帰国子女で、日本の文法重視&コミュニケーション軽視の英語教育にずっと疑問を感じていた私にとって、「その通り!」と喝采したくなるほどの感動を与えてくれました。実際、髙橋先生が教えてくれる授業は、自分が中学生の頃にこんな授業を受けたかったと思わせてくれる時間で、授業ってこんなにも楽しくできるんだ、と衝撃を受けました。だんだんと「コミュニケーションツールとしての英語を教えられる教師になりたい」という意志が固まり、3年次に髙橋ゼミを選択。もちろん、駅伝部での活動も一生懸命行っていたので、ゼミナールでの研究活動は困難を極めたのですが、先生は一切容赦がありませんでしたね。「授業は準備が命!」。模擬授業を行った後はそう何度も指摘され、少しでも曖昧な箇所があればどこまでも厳しく突っ込まれました。「準備が足りないから、君の授業は通りいっぺんで生徒をひきつける魅力がないんだ」と言われ、駅伝部の夏合宿でも自分一人だけパソコンを持ち込み、皆が寝ている間に資料を読むといった忙しい日々を送りました。それでも続けてこられたのは、いくらダメ出しをしても、駅伝部と教職課程をかけ持ちをしている私の努力を認めて、応援してくれているのを感じていたからです。「先生の期待に応えよう」という気持ちで困難を乗り越え、駅伝部もゼミナールも満足のいく活動を続けることができ、晴れて英語教師としての道を踏み出しました。
02学んだのは、生徒以上に生徒である覚悟
現在は、横浜市の小中一貫校で、小学6年生と中学生の授業を受け持っています。大学で中学校と高校の英語科教員免許を取得し、最初の赴任校である中高一貫校で7年間教鞭を取った後に異動となったのですが、まさか小学生に英語を教える機会が訪れるとは思ってもみませんでした。しかし、私はこれまで、挑戦するかしないかと問われる場面で、必ず挑戦する道を選んできた自負があります。小学生クラスの受け持ちを立候補し、コミュニケーションツールとしての英語教育と、受験科目としての英語教育をいかに両立させるかをテーマに授業に臨んでいます。このテーマにたどり着いたのは、いくら小学校で英語を話す楽しさを知っても、中学校の受験英語で興味を失ってしまう子どもたちがたくさんいる現状を目の当たりにしたからです。「確かに、日本では受験科目として英語の点数を取らなければ、希望の高校や大学へ進学できない。でも英語を嫌いになってほしくない」。そんなジレンマを抱える胸の内に、忘れられない言葉がありました。それは、髙橋先生からかけられた激励メッセージ「阿部君、もし学ぶことを止めたら教師を辞めるときだよ」。教師は常に教育現場のさまざまな課題、子どもたちが抱える問題に積極的に向き合い、打開するため学び続け、進化を続けなければならない。生徒以上に学ぶ努力をしなくなったとき、自分は教壇に立つ資格はないのだと。
03英語でコミュニケーションを取る楽しさを伝えたい
子どもたちに英語を好きになってもらいたい、そしてその教育成果を可視化したいという目標に向けて、今、私は新たな挑戦を始めています。それは、前任校である中高一貫校で開発された新たな英語教育の手法「ラウンドシステム」を小中一貫の学びにどう適応させ導入するかという取り組み。ラウンドシステムとは、1冊の教科書を1年間で何度も周回して学習するという意味です。通常の教え方は、10章ある教科書なら1年間かけて1章、2章…と順番に進めていきます。これに対しラウンドシステムは、まずリスニングで10章を通して学び、次にリーディングで10章を通して学ぶという具合に、1冊の教科書を異なるアプローチで何度も繰り返し学ぶ手法です。従来の授業の進め方とは異なるので賛否両論ありますが、「読む」「書く」「話す」「聞く」の英語4技能においてめざましい成果を上げ、全国に広まりつつある教え方でもあります。私は教鞭をとるかたわら、横浜の英語教師が主宰する「ラウンドシステムの会」に入り、その教育理論や学習手法を学び、研究を日々進めているところです。そして、実際に小学6年生の授業で実践しながら、彼らの英語へのモチベーションを中学校、さらに高校受験までどのようにつなげていくかを試行錯誤している毎日。この試行錯誤が、進学するごとに英語への興味を失いつつある子どもたちに、英語で世界とコミュニケーションする楽しさを伝える力になれば嬉しいですね。そしていつか、この取り組みを研究論文としてまとめて発表し、英語科教員を目指す人たちを養成する仕事にも携わっていきたい。もっと多くの子どもたちに「英語で話すことって楽しい」と思ってもらえることが私の夢です。
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※内容はすべて取材当時のものです。