卒業生

まずは飛び込んでみること。その先の人生は、自ずと開かれる。

杉山 夏海 工学部 建築学科(現 建築学部 建築学科)
職種:ハウスメーカー 建築士
就職先:パナソニック ホームズ株式会社

INDEX

01勧められて建築学科を選び、“好き”が後からついて来た

キャリアデザインを考え始めた学生の皆さんに私が伝えたいのは「人生、なるようになる」ということ。最初からしっかりと目標を立てなくても、興味を持ったことに飛び込んでみれば、自然と次の一手が見えてきます。私自身がそうでした。きっかけは、高校の三者面談を前になんとなく眺めていた進路のガイドブック。そこに掲載されていたインテリアコーディネーターの仕事が気になると先生に打ち明けたところ、「建築を学べば、インテリアだけでなく建物ごと作れるぞ」と建築学科への進学を勧められたんです。

 

本格的に建築の面白さに目覚めたのは、神大へ入学し、模型を作ったり図面を引いたりするようになってからでした。歴史的建造物からモダンな公共建築まで、個性ある魅力的な建物が日常の隣にある横浜という環境も大きかったのかもしれません。美術館や図書館についての課題に取り組んだ後に街へ出ると、建築家たちが何を思って建物の動線や形状を考えたのかが見えてくる。気が付くと私は建築にのめり込んでいました。

 

設計事務所でのインターンシップに参加したのは3年次の夏。学校や商業施設を手がける設計事務所に約3週間通い、打ち合わせや模型製作を体験させていただきました。そこで気付いたのは、「大きな建物より、暮らしのさまざまなシーンを想像しながら設計できる“住宅”の方が自分には向いているんじゃないか」ということ。それからは、ハウスメーカーに照準を合わせて志望企業を選び、大学で取り組んだ課題をポートフォリオにまとめて各社の面接に臨みました。パナソニックホームズを目指したのは、機能性タイルを用いた外壁などのデザインが好きだったから。そして、細かいモジュール(基準寸法)で設計することができるため、技術面でもお客さまにアピールできる点に魅力を感じたからです。内定を頂けた時、これから学べることや、つくれるもののことを考えてワクワクしたのを覚えています。

02営業設計として働く中で、ふと心に留まった申請の仕事

新入社員となった私を待っていたのは、設計職に必要な力を付けるための1年間にわたる研修です。並行して、建築士免許の取得を目指して同期の仲間とスクールに通い、学科試験と製図の実技試験に向けた対策に取り組みました。上司や会社のバックアップに支えられ、無事二級建築士の免許を取得。研修期間を終えた私は、営業設計として働き始めました。営業担当と共にお客さまのご要望をうかがい、契約後は自らが主体となって注文住宅のプランニングを進めていくのが営業設計の役割。建物そのものの設計がある程度進んだら、インテリア担当や申請担当に情報共有し、チーム一丸となってお客さまが思い描く住まいをかたちにしていきます。

 

現場に出て痛感したのは、ハウスメーカーの設計という仕事が、想像以上に人と深く関わる仕事だということ。住まいに何を求めるか、どんな応対を快適と思うかは、お客さまによって千差万別。最初の数年間はうまくお客さまのニーズにお応えできず、自分の至らなさに落ち込むことも多くありました。そんな中で支えになったのが、自分が設計した住宅がかたちになった時の喜びです。図面や3D画像で何度確認していても、完成した住まいを目の当たりにした際の感動は想像以上でした。そんな私以上に感激してくださるのが、“一生の買い物”をされたばかりのお客さまです。何度も打ち合わせを重ねたお客さまが完成後の住まいを体感しながら「打ち合わせでいろいろ悩んだけれど、やっぱりこの形にして良かった」と笑顔を見せてくださる瞬間は、設計者に贈られる最高のプレゼントだと思います。営業設計の仕事は時間との戦いです。お客さまのご要望に応えられる提案を考え、検討してまとめるリミットは次回打ち合わせまで。元来マイペースな私は、設計にやりがいを感じていたからこそ、次第に「自分が納得できるレベルまで、内容をじっくり理解して仕事がしたい」と思うようになりました。一級建築士免許も取得し、次のキャリアを考えていた中で心に留まったのが、同じ設計部の中の申請業務でした。設計ほど一般に知られているわけではありませんが、建築確認などの申請に必要な資料を作成し、法規をチェックしたり、確認検査機関や行政とのやりとりを行うことも、建築士の大切な業務です。建築に関わる法規は、もちろん営業設計担当としても把握しておくべきですが、つい見落としがちな細かな法規について、申請担当の先輩方に助けていただく場面がよくありました。そうした自分の知識不足を補うために、異動希望を出し、入社6年目で申請担当になりました。「どうキャリアを積んでいくか」を考える時、いつも励みになっているのが、同じ建築業界で働く学生時代の友人との時間です。在学中、製図室にこもって夜中まで一緒に課題に取り組んだ友人と会って悩みを聞いてもらうだけで、なんとなく考えがまとまり前へ進む力が湧いてくる。大学で得た一番の宝物は友人かもしれません。

 

申請担当のやりがいは、自分の成長をしっかり感じられるところです。基本の建築基準法を参照するだけで済むシンプルな案件からスタートした私も、徐々に複雑な案件を任せてもらえるようになりました。最初はよく分からなかった建築法規も、2件、3件と経験を重ねるうちに理解が進み、スムーズに業務を進められるようになってきます。同じ神奈川県内でも、市街地の中高層建築と、農地に囲まれた住宅では満たすべき法規が異なるので、できることの幅を広げながらコツコツ経験を積んでいくのが重要。設計担当者から「杉山さんが担当なら安心」と思ってもらえるような、申請のエキスパートになるのが今後の目標です。現在入社7年目ですが、申請担当としてはまだ2年目。早く先輩方のレベルに追いつかなければと必死です。休日に夫と散歩をしていると、よく言われるのが「また、建物見てたね」というひとこと。仕事で毎日建築に触れているのに、面白い建物を見ると、やっぱり目を奪われてしまいます。建築学科に進もうと決めた高校時代には、自分がここまで建築を好きになるとは思いませんでしたし、今携わっている申請業務については、そういった役割が存在することすら知りませんでした。建築という分野の中身も、未来に向かって進みたい道も、4年間学ぶ中で見えてきたものです。

 

きっと学生の皆さんも、明確な夢を持って入学した方ばかりではないと思います。夢を持っている方はそのまま突き進んでください。そうでない方も、焦らず自分のやりたいことや好きなことに取り組んで、自分のペースで進んでみてください。自ずと、将来への道は開かれていきます。

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※内容はすべて取材当時のものです。