卒業生

大好きなフライトと共に自らも高みを目指し続ける

島津 陽介 経営学部 国際経営学科
職種:パイロット(運航乗務員)
就職先:日本航空株式会社

INDEX

01コロナ禍で再認識した航空会社の使命

副操縦士として、ボーイング767型機の乗務にあたっています。担当路線は、千歳・羽田・伊丹・福岡・那覇などの国内線、そしてフィリピン・台湾・グアム・ハワイといった国際線。入社16年目でパイロットとしては中堅ですが、それでもフライトごとに新たな気付きがあるのがこの仕事の魅力です。

 

例えば、横から風を受けながらの着陸時、どうしたら衝撃を少しでも和らげることができるか。自分なりに工夫して、お客さまの快適性につながる操縦を見つけられた時はうれしいですし、うまくいかなかった時も「次こそは」とモチベーションが上がります。やはり、航空機の操縦が好きなんです。

 

近年の大きな出来事といえば、新型コロナウイルス感染症の流行です。世界中で移動が制限される中、弊社でも国際線を中心に路線の減便を行い、私もそれまで月20日ほどあったフライトが一時は10日以下になりました。ですが、社内の空気は前向きで、パイロットの同僚には、「こんな時こそ」と航空法の勉強会を開いて研鑽を積んでいる人もいました。私も、ちょうどフライトと採用業務を兼務し始めたところだったので忙しかった覚えがあります。

 

当時担当していたのはインターンシップや採用面接。インターンシップは「オンライン実施でも満足してもらえるように」と担当者全員で知恵を絞りました。パイロット志望者向けのインターンシップは、私たち現役パイロットがアイデアを練るんです。そこで立案されたのが「パイロットになるまでの道のりを疑似体験してもらう」という企画でした。地上研修でこんなお客さまがいらしたら?というロールプレイングや、映像を交えてATC (航空交通管制)と英語で行う通信訓練などを盛り込みました。業務の臨場感を味わってもらう要素は加えつつも「パイロットになるのは難しい」と敬遠されないよう専門用語などには配慮し、参加者からは好評を得られました。就活サイトのインターンシップランキングでも上位に入り、ほっとしました。

 

「パイロット志望だが、今回のような出来事があると心配だ」。コロナ禍の採用活動では学生の皆さんからそんな声を聞くことが多く、それをきっかけに私も自分の仕事を見つめ直しました。確かに、コロナ禍でフライトは減ったかもしれません。けれども、温度管理とスピードが求められるワクチン輸送や貨物便、2、3日後に出入国制限を予定する国から日本人を出国させるための国際線チャーター便運航など、“航空機だからできること”を認識する機会も多かったのです。航空路線は、なくすことができないライフラインの一つ。チャーター便に乗務した客室の担当者から「緊急帰国されたお客さまが安心して涙を流され、感謝の言葉を口にされていた」と聞き、航空に携わる使命を改めて感じました。パイロットを目指す上での不安を打ち明けてくれた学生の皆さんにも、この話を伝えました。また説明会では、「コロナ禍で部活動の練習ができないので、部屋でこういうトレーニングをしているんです!」と、目をキラキラさせながら話してくれた参加者の方に、こちらが感銘を受けたこともありました。自分を取り繕わず、不安も緊張も力強さも、自分らしさを素直に出してくれる方は、良い意味で印象に残ります。

 

私が採用に関わった2年間に入社した社員は、現在地上研修中。顔を合わせれば立ち話をしますし、食事を共にすることもあります。自分が面接を受ける側だった就活生の頃に出会ったパイロットの先輩方と同じように、私も仕事の魅力を次の世代に伝えていけたらと思っています。

02昇格訓練を前に思い出すグアムでの経験

もうすぐ機長への昇格訓練が始まるので、今はその準備をしています。機長と副操縦士に業務上の大きな違いはありませんが、責任の範囲が異なります。ペアを組む機長の様子を見ていても、副操縦士の私が目の前のフライトに集中しがちなのに対して、機長は全体を俯瞰している印象です。例えば、羽田から伊丹の便で到着が遅れそうになった場合、機長は、現在乗務している便だけでなく、帰りの伊丹から羽田の便で遅れを取り戻すため、次のフライトの整備、清掃から給油時間まで、コックピット外のチーム全体に目を配っています。指示ではなく、チーム業務をうまく円滑に進める采配を見るのも勉強の一つです。

 

最近よく思い出すのが、パイロットになる前の訓練中、グアムで初めて大型旅客機を操縦した時のこと。小型機やシミュレーターでの操縦は何度も経験していたのに、エンジンがかかった時の音や振動に圧倒されて、私は手順よく操作することができませんでした。その時はお客さまを乗せていなかったのですが、旅客機を操縦する責任と重圧を実感しました。お客さまの命をお預かりしていることを意識する時、今も私の胸にはあの時の感覚がよみがえってきます。

03就活を変えた就職課からのアドバイス

「英語を使って仕事がしたい。まずはたくさん企業を見て、それから業種を絞り込めばいいかな」と就職活動に臨んだ学生時代の私。JALにエントリーしたのも腕試しのつもりでした。けれど、一次面接で出会った現役パイロットの先輩方が楽しそうに仕事を語る様子に惹かれて「この会社で働きたい」と気持ちが一変。準備不足を補おうと、二次面接に備えて面接受けしそうな志望理由をあれこれ考えていた時、「一次面接で感じた気持ちをそのまま伝えてみたら?」とアドバイスしてくれたのが、大学の就職課の方でした。今も、時折その言葉を思い出します。面接の短い時間で人のすべてを知ることはできない。でも、面接官として多くの方とお話をしていると、本来のその人らしさと“見せたい姿”とのずれにかすかな違和感を覚える瞬間があります。私たちの仕事においては、自分に足りない部分を素直に認め、チームでそれを補完しあっていくことがとても重要。現在、私は採用担当を離れましたが、学生の皆さんには、勉強や私生活を目いっぱい楽しみ、ありのままの自分に自信を持って前向きな挑戦をしていただきたいと思っています。

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※内容はすべて取材当時のものです。