卒業生

吹奏楽に全力で取り組んだ経験が、今の自分を動かしている。

古谷 美里 法学部 自治行政学科
職種:楽器販売
就職先:株式会社ヤマハミュージックジャパン

INDEX

01音楽の楽しさや感動を伝える仕事がしたい

「昼休みに楽器体験を行います。興味のある人は集まってください」。きっかけは、小学2年生の時に流れた校内放送でした。私が通っていた小学校には吹奏楽部があり、部員募集のためにしばしばそんな行事が開催されていたのです。友人と音楽室へ向かうと、上級生たちがさまざまな楽器とともに迎えてくれました。実際に吹いてみて一番楽しかったのがクラリネット。入部を決めたその日から、私の“吹奏楽人生”が始まりました。

小・中・高は部活動一色。ひたすら練習に励む毎日でした。顧問の先生のほか、学外からも各パートの先生を招いて指導を受けます。厳しくも納得のいく練習に打ち込んでいるうち、気付けば全国大会の舞台に立っていました。そして自然と、「憧れの先生のようなクラリネットの指導者になれたら」と思うようになったのです。

 

大学でもクラリネットを続けたいと考えていましたが、音大進学はどうもしっくり来ない。音楽以外の道も探りながら演奏に取り組める大学を探し、吹奏楽の強豪校として知られる神奈川大学への入学を決めました。入部して驚いたのは、神大吹奏楽部が想像以上に密度の濃い活動をしていたこと。全国大会で何度も金賞を受賞している部ですから練習の厳しさは予想していましたが、大会以外にも演奏活動の予定がびっしり詰まっていました。

入学式での歓迎演奏、5月の地方遠征、6月のサマーコンサート。7月から10月までは予選から全国大会へと続くコンクールシーズンです。秋にはアンサンブルの大会があり、1月には定期演奏会。それが終わると3月の演奏会に向けた新曲の練習です。厳しいスケジュールの中、どうすればもっと良い演奏ができるのか考え、同じパートの仲間と励まし合いながら技術を磨いた日々。部内のオーディションでメンバーに選ばれ、コンクールの自由曲で『サロメ』『中国の不思議な役人』といった名曲に取り組んだ経験は、私の人生の宝物です。

 

大学生になって変わったのは、楽器店に行くようになったこと。演奏に必要なアイテムを買うために、銀座にあるヤマハの旗艦店を訪れたこともあります。より良い演奏をするために不可欠な楽器店の存在。私は吹奏楽に打ち込んできた経験を生かして、「楽しく演奏したい」と思っている誰かを応援したい、指導者になる以外にも楽器店でその夢を叶えることができるかもしれないと気付いたのです。

とはいえ、4年次も就職活動に取り組みながら、引退する最後の演奏会まで部活、部活の毎日。なんとか両立させつつ、ヤマハミュージックリテイリング(現ヤマハミュージックジャパン)の内定を得ました。

02社員になって改めて実感したヤマハの楽器の魅力

晴れてヤマハミュージックジャパンの一員となり、研修後は横浜店で管楽器の販売・接客を担当することに。先輩から楽器の扱いを一つひとつ丁寧に教わりました。クラリネットなどの木管楽器は馴染みがありましたが、金管楽器となると構造からまったく異なります。新しい楽器の勉強は毎回手探りでしたが、どの楽器も自分で音を出せるようになると楽しくなってきます。

そして働く側になって初めて分かったこともあります。学生時代、私は海外メーカー製とヤマハ製、2つのクラリネットを使っていたのですが、ヤマハ製の楽器は「音が出しやすく、音程を安定させやすい」という実感がありました。けれど社員になっていろいろ吹き比べてみると、「音色の奥深さ」という魅力をより強く感じられてきたのです。初めて楽器に触れる方でも気軽に楽しむことができ、熟練したプロの奏者も満足する豊かな音。それは「たくさんの方に音楽の楽しさ、感動を伝えていきたい」という私の思いをしっかり叶えてくれるものでした。

印象深いのは、「大人になってから始めても、クラリネットを吹けるようになりますか?」と音楽教室への入会を希望する女性が来店された時のこと。私は、教室の講師と連携し、その方がこれからどのように音楽とつきあっていきたいかをヒアリングしながら、マウスピースの選び方などをご提案しました。その後も何かとご相談をいただき、「先生と古谷さんのおかげで、レッスンが楽しいです!」とおっしゃっていただいたときは、「自分の経験が役に立ったんだな」とうれしかったですね。

 

現在勤務しているのは、2024年6月にオープンした『ヤマハミュージック 横浜みなとみらい』。管楽器・弦楽器・ギターの販売と接客、そして商品の発注・仕入れ・管理といった業務が私の仕事です。ここは気軽に音楽や楽器を楽しむことができる体験型のブランドショップで、これから楽器を始めたいとお考えのお客さまも多くいらっしゃいます。オープン直後は予想を上回る数のお客さまで賑わい、ご希望の楽器をご案内するまでにお待たせしてしまうこともありました。ですが、日々現場の様子を見ながら、体験できる楽器の種類や受付方法を調整したり、スタッフのオペレーションを工夫したりすることで、より良い体制を整えることができてきました。職場で大切なのはコミュニケーション。入社8年目の私は同じチームで働くメンバーの中ではまだ若手ですが、現場で気付いた意見はしっかり伝えるようにしています。立場が異なるメンバーが意見をすり合わせながらひとつの目標に向かっていく吹奏楽部での経験が、そんな場面で役立っているのかもしれません。

03全力で何かに打ち込んだ経験を生かすために早めの一歩を

ひとつのことに全力で打ち込んだ経験は人生の大きな財産になります。けれどその分、学部の勉強や、就職活動に割ける時間が限られてしまうのも事実。私はタイミングにも恵まれ、音楽に関わる今の会社に入社することができましたが、その機会を逃していたら、やりたい仕事に就けなかった可能性も十分にあります。部活動を頑張る学生の皆さんに伝えたいことは、就職活動をする時間が確保しにくかったら、その分早めに取りかかった方が良いということです。ちょっとした空き時間でもいいので、自分が好きなものや興味があることについて調べて、アンテナだけは立てておくこと。やりたい仕事との接点さえつかんでいれば、何かに全力で取り組んだ経験は、未来をつかむ上できっと皆さんのプラスになります。

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※内容はすべて取材当時のものです。