卒業生

「市民の安心を守る警察官になる」その夢に向かって、まっすぐに。

相川 真衣 人間科学部 人間科学科
職種:警察官
就職先:神奈川県警察 鉄道警察隊

INDEX

01警察の幅広い部門の中には、自分を生かせる場所がきっとある

警察官に憧れるようになったきっかけは、ドキュメンタリー番組「警察24時」。被疑者逮捕の瞬間など、さまざまな緊迫した場面が放送される中で、最も私の心を動かしたのは、下着を盗まれて不安がる被害者にそっと寄り添う女性刑事の姿でした。「私もこんなふうに誰かの役に立てる仕事がしたい」。それから、警察官になることが私の目標になりました。

 

神大への進学を考えたのも、警察官輩出数が多いと聞いたからです。最初は法学部を検討していましたが、調べてみると公務員試験に合格できれば専攻は法学でなくてもかまわないのだと知り、心理学系のコースを擁する人間科学部へ進むことにしました。“なぜ人は犯罪を犯してしまうのか”という人間の行動に影響を及ぼす心の動きというものに興味があったからです。

そして入学後、私は合気道部に入部しました。警察官を目指すなら、武道をやっておいた方がよいと思ったからです。合気道には勝ち負けがありません。技を磨き心身を鍛える稽古は、自分と向き合う時間です。週5日の稽古や年4回の合宿はきついこともありましたが、このとき養った忍耐力や精神力は、警察官として働く今、どうしても力では敵わない相手と対峙する場面でも、平常心を保つ源となっています。

「警察官になりたい」と宣言し、それまでやったこともない武道に取り組み始めた私の様子を見て、家族は当初あまりいい顔をしませんでした。「せめて署内の事務職員にしたら?」と心配する母から懇願されたこともあります。けれど私の意志の固さに、母もついに折れてくれました。そして「昔、110番をしたことがあるのよ」とかつての出来事を語ってくれたのです。自宅の外装工事のため組んでいた足場に知らない人が侵入してきて怖かったこと。通報すると警察官がすぐ駆けつけてくれてホッとしたこと。その話を聞いて、地域の人が安心して暮らせる社会をつくりたいという思いはいっそう強くなりました。

 

もちろん私も「自分は本当に警察官に向いているのか」と悩んだことはあります。けれど、大学3年次、警察官の採用説明会に参加してから、そういった気持ちのブレはなくなりました。私たちにとって身近な交番のお巡りさん、つまり地域警察のほか、交通、生活安全、刑事、警備など、警察にはさまざまな部門があることを知り、パッと目の前が開けたような気がしたのです。ひとつの部門を経験して自分には合わないと思ったとしても、きっと他にも自分の適性に合った場所を見つけられる。それからは心を決めて、公務員試験合格を目指すことに専念しました。

試験に向けて活用したのは、資格試験予備校と提携した学内の公務員講座(当時公務員試験講座)です。試験突破のためのポイントを教えてもらえるだけでなく、公務員として活躍する神大卒業生の話も授業の合間に聞かせてもらえたので、勉強のモチベーションを維持する上でも助けられました。講座の仲間には警察官だけでなく、消防官や自治体職員を目指す人もいました。目標は違っても、「人や社会の役に立ちたい」という思いは同じ。そんな仲間と励まし合いながら切磋琢磨した末に、地元である神奈川県警察から内定をいただけたときは胸がいっぱいになりました。

02被害者の気持ちを第一に考えながら話を聞く

全寮制の警察学校で6カ月間訓練を受けた後、最初に配属されたのは横須賀警察署の地域課です。交番での警察官の仕事は多岐にわたり、事件・事故や落とし物対応から、道路にある動物の死骸の片付けまでなんでもやりました。警察は24時間365日体制で動いているので、働き方も「朝から24時間当番として働き、当番勤務明けは非番、翌日は週休日」といったように独特で不規則です。最初は戸惑いましたが、休みの日にはヨガやピラティスをしたり、友人と出かけるなどリフレッシュしています。

また、女性警察官も年々増えてきており、署内の女性警察官が部署の垣根を越えて集まる「女性会議」が開かれています。議題そのものは「着替えの場所が少ない」などの日常的な困りごとを解消する内容なのですが、その会でさまざまな部門・年代の先輩たちと知り合えたのはとても有意義なことでした。先輩たちをロールモデルに、警察官として働く十年後の自分、結婚や出産を経た自分をイメージできるようになり、ライフプランを考える上でたくさんのことを学ばせてもらったからです。

 

4年目の今は、横浜駅にある鉄道警察隊の本隊に所属。電車内や駅構内における痴漢や盗撮、不正乗車などの検挙活動や予防が主な任務で、110番や駅係員からの通報を受け、現場に急行して対応しています。すべての駅に鉄道警察隊が駐在しているわけではないので、私たちの業務範囲は横浜駅だけではありません。通報があれば管轄内の駅へ向かいますし、日々のパトロールも行っています。

例えば痴漢や盗撮であれば、到着して最初に行うのは被害者と被疑者を別々の場所に離し、それぞれに話を聞くこと。被害者の多くは突然被害に遭って驚きと恐怖で混乱しているため、まずは安心できるように声かけをして、相手の気持ちに寄り添い、体調に配慮しながら聞き取りをしています。

ある時、盗撮の被害に遭われた女性に、別日で書類作成のための聞き取りをしたことがありました。思い出したくないであろうことを再度聞かれて、本当は不愉快だったと思いますが、彼女は最後に「しっかり対応してもらえて良かったです」とお礼を言ってくださいました。こんな方が嫌な思いをするような世の中は間違っている。真摯に業務に向き合い、卑劣な犯罪をなくしていかなければ、と思いを新たにしました。

 

一方、被疑者の話を聞く際に心がけているのは、先入観を捨てることです。疑わしいと思っても、具体的に何があったのか話を聞き、防犯カメラがある場合はその映像を確認してみないと事実は分かりません。決めつけず、丁寧に向き合うようにしています。

実際に業務に就いてみると、警察官は想像以上に人と接し、関わっていく仕事でした。大学進学時は「4年間学びたいことを学ぼう」と人間科学部を選びましたが、今はその選択が自分の強みを作ってくれたような気がしています。どんな学びも、どんな能力も、生かすことができるのが警察です。「警察官になって、こんなことがしたい」と思うことがひとつでもあれば、ぜひ目指してみてください。

関連リンク

※内容はすべて取材当時のものです。