卒業生
乗客の安全・安心を守る姿に憧れ、それが自分の目標に。
中嶋 綾香
外国語学部 中国語学科
職種:客室乗務員
就職先:日本航空株式会社
INDEX
01家族旅行で出会った客室乗務員の姿に憧れて
きっかけは、小学校卒業記念の家族旅行でした。客室乗務員が主役のテレビドラマ『アテンションプリーズ』が好きだった私は、ワクワクしながらドラマで観たJALの飛行機に乗り込みました。気持ちが一変したのは、機体が突然大きく揺れ出したときです。ちょうど化粧室にいて、恐怖のあまり出られなくなってしまった私に、声をかけて席まで付き添ってくれたのは客室乗務員の方でした。「CAさんって、キラキラしているだけじゃなくて、頼もしくてかっこいいな」。その時に抱いた憧れが私の出発点です。
英会話を習っていたので、もともと語学には興味がありました。高校生になった頃、世間で話題になっていたのは、中国の食品安全や知的財産権をめぐる問題でした。当時は、中国のGDPが大きく躍進していた時期でもあり、「急成長をしている国だが、報道されていることは本当なのだろうか。中国のことをもっとよく知って、自分で確かめてみたい」と思い、中国語に興味を持つようになりました。「英語ができる人はたくさんいるから、今後は中国語を学んでおくと強みになる」という兄からのアドバイスが決定打となり、神奈川大学の中国語学科へ進むことを決めました。
入学前に知っていた中国語は「你好」と「谢谢」だけでした。大学でゼロから中国語を学ぶにあたり、私は3つの目標を立てました。「中国語の日常会話をマスターすること」「中国への留学を実現し、4年間で卒業すること」、そして「日本語教員の資格を取得すること」です。派遣交換留学制度を利用して南京大学へ留学したのは、2年生の後期からの1年間でした。反日感情が強いと聞いていましたが、いざ行ってみたら気さくに声をかけてくれる人が多く、驚きました。また、現地で耳にする中国語の、まるで歌っているかのように美しい音の響きに改めて魅了されました。まさに「百聞は一見にしかず」です。
一方で、苦労したのは語学力です。留学前に1年半頑張ったにもかかわらず、現地で私の中国語はほとんど通じず、最初は英語でコミュニケーションを取るしかありませんでした。悔しさをバネに、語学クラスで言い回しや文法を体系的に学び、授業外ではとにかく現地の人と話す毎日を過ごしました。その結果、帰国する頃にはなんとかカタコトの中国語を脱し、日常会話ができるまでに上達しました。
02エアライン講座で自分を見つめ就活スタートの遅れを取り戻す
中国語漬けの日々に別れを告げて、大学3年生の後期に帰国すると、同級生の話題は就職活動一色でした。何社もインターンシップに参加するのは当たり前で、すでに内々定をもらっている人もいました。一方の私は、「客室乗務員には憧れるけど、日本語教員もいいな」と、自分の将来像すら定まっていない状態でした。ひとまず就職課主催のエアライン講座を受けることにしましたが、その選択は正解でした。自分が仕事に何を求めるのかを見つめ直し、自己分析や業界分析に取り組んで遅れを取り戻すことができたのは、エアライン講座のおかげです。
しかし、そこからが大変でした。エントリーシートを送っても、なかなか面接に進めない日々が続きました。「会ってすらもらえない」と落ち込んでいた時期に支えてくださったのは就職アドバイザーの方でした。その頃の私は、1社に断られると、他の企業にも受からないような気がしていました。しかし、実際は、企業によって求める人物像は違います。1社に断られても、私のような人財を求めている企業はきっとあるはずです。就職活動中は、そのことに気付きにくくなってしまうので、就職課で客観的なアドバイスをいただけたことで、前向きな気持ちを取り戻すことができました。
03先輩からいただいたアドバイスでスランプを脱出
現在は、国内線・国際線の客室乗務員として保安業務と機内サービスに従事しています。中国語を話されるお客さまはどの路線にもいらっしゃるので、中国語を学んで良かったと感じる機会が多くあります。
この仕事の魅力は、お客さまとの出会いを通して日々新鮮な感動を味わえることです。同じ路線でも、便によって機内の雰囲気はさまざまです。例えば、先日乗務したシドニー便は明るく気さくなお客さまが多く、「機内食おいしいね」「快適な空の旅だったよ」と声をかけてくださり、私自身も自然と笑顔になりました。
もちろん、仕事ですから困難に直面することもあります。印象に残っているのは、国際線乗務が始まった頃のことです。国際線は機内食サービスがあるため、手際良く対応することができませんでした。選択肢のある機内食を偏りなくお配りするにはどうしたらいいか、ミールカートの準備を始める最適なタイミングはいつかなど、事前にいくらイメージトレーニングをしても、いざ現場に立つとうまくいかないことばかりでした。この困難を乗り越えられたのは、バディを組んだ先輩から「やるべきことをメモして貼っておけばいいんじゃない?」というアドバイスをいただからです。当時の私は毎日が試験のような心境で、メモを使うという発想すらありませんでした。しかし、それからはメモを積極的に活用するようになり、おかげで頭の中でTo Doリストを整理できるようになりました。入社から今まで、先輩方の存在には本当に助けられています。
今では私が後輩に助言することもありますが、フライトに臨む際は、初心を忘れず、常に気を引き締めています。フライト前に共有されるお客さまの情報は、ショーアップと呼ばれるクルーの集合時間までに社用タブレット端末で確認するのが毎回のルーティンです。特別食をご希望のお客さまがいらっしゃるかどうか、お子さま連れのお客さまや、お手伝いを希望されるお客さまの座席など、事前に情報を把握し、機内でのサービスや緊急時の対応をシミュレーションします。客室乗務員はお客さまの尊い命をお預かりする仕事です。お客さまそれぞれに大切な存在がいらっしゃることを常に意識して業務に取り組んでいます。かつて、小学生だった私の手を取り、席まで付き添ってくれた先輩のように、私もお客さまの安全と安心をしっかりと守る客室乗務員でありたいと思います。
関連リンク
※内容はすべて取材当時のものです。